「自身の病を認められない」アルコール依存症が否認の病気といわれる理由

アルコール依存症入院体験談等

アルコール依存症の特徴として前回の記事では「完治しない病気」という点について解説した。今回はもう一つの大きな特徴である「否認の病」という点について書こうと思う。

この「否認の病」という特徴も、ARP(アルコール依存症回復プログラム)の中で初期に触れられる重要な内容である。私が入院治療をしていた際も初めのほうに治療プログラムの中で教えられた。

「否認の病」ってどういうことだろう?

なぜ、自分の病気をみとめられないのだろう。

否認の病と呼ばれる3つの理由

アルコール依存症の患者が自分自身の依存症を認めない理由として大きく下記の3点があげられる。家族や周りの人間からすれば、明らかに異常な飲酒行動を起こしているのに認めない。

周囲からすれば「なぜ、認めないのだろう」とモヤモヤ、イライラするだろう。もし、そのような状況の方がいれば下記の理由を読んでいただければ、患者が病気を認めない理由が少しわかるかもしれない。

自己保身(事故保護機能)

アルコール依存症患者は、自分が依存症になっていることを認めることで、自分自身が問題を抱えていることを認めることになってしまう。このことは、アルコール依存症患者の自己評価を脅かすことにつながる。そのため、自己保護機構として、アルコール依存症患者は自分自身を否認し、問題がないと考えてしまう傾向にあるのだ。

何らかの悩みを抱え、その辛さから逃れるために飲酒を始めたのに、それが更に自分を苦しめている。依存症を認めることで、今以上に自分を精神的に追い込むことになってしまうため、心の奥底ではわかっていても認めることができない場合も多いのかもしれない。

アルコール依存症を認めると、楽しみなお酒が飲めなくなる

という理由もあるかもね

世間体(社会的な制約)

アルコール依存症患者は、社会的な制約や偏見から、依存症であることを公表しにくい場合がある。そのため、周囲の人々に自分がアルコール依存症であることを明かすことができず、否認するのだ。

例えば、会社員として働いている場合、アルコール依存症を認めて治療することが本人にとっても会社にとってもよいのにも関わらず、これまで気づき上げてきた組織での地位やプライドが邪魔して病気を認めることができない。

悩み事や、ストレスを一人で抱え込んでしまう

真面目なタイプの人があてはまりそうだね。

私自身もこのパターンに陥っていたと思う。依存症を医師から伝えられた時点で、もっと早めに入院治療をしていればよかった。

しかし、アルコール依存症を周囲に知られることが恥と感じてなかなか言い出すことができずにいた。ずるずると引きずることで、最終的に限界を超えてしまってから会社に休業を申請することになってしまい、結果的に大きな迷惑をかけることになってしまった。

他にも、近所づきあいなど周囲との関わりが多い場合、入院治療してしまうと近所で噂になってしまい、退院後も住みづらくなってしまうのではないかというような不安を感じてしまったりする。といった社会的な制約を感じてしまう場合がある。

飲酒の正当化(認知的バイアス)

アルコール依存症患者は、アルコールを飲むことが正当化されるような認知的バイアスを持つケースがある。例えば、アルコール依存症患者は、アルコールを飲むことで、ストレスや不安を和らげることができると思い込んでしまう。周囲から見ると、まったくそんなことはないのに飲酒をしたから仕事や人間関係がうまくいったと勘違いしてしまうのだ。

今までの経験や直感から、非合理的な判断をしてしまうことを

認知バイアスというそうだ。

一杯飲んでから商談に行ったから、大きな取引が成功した。酒の力を借りて仲良くなったい人がいる。など、飲酒しなくても成功していたことを、あたかも「飲酒したから成功した」と信じ込んでしまう。

ほかにも、飲酒をしたことによって周囲に迷惑をかけているにも関わらず、本人がそのことに気づいていおらず、自分は飲酒しても、他人に迷惑はかけていないという思い込みをしてしまうパターン。

このような思考が認知的バイアスの事例としてあげられる。

そのため、自分自身がアルコール依存症であることを認めることは、自分自身の正当化された飲酒に疑問を投げかけることになり、認めることができなくなってしまうのだ。

認めることが回復への第一歩

以上、アルコール依存症が否認の病気といわれる3つ理由を解説した。否認の病気と呼ばれるが、回復への第一歩は、まず、本人が自信のアルコール依存症を認めることである。

上辺だけはアルコール依存症を認めたとしても、心の底からは認めないケースもある。そのような場合は隠れて飲酒をしたり、開き直って吞んでしまうなど、いずれ飲酒欲求を抑えきれなくなるだろう。

本人がアルコール依存症を学び、自身の依存症を認め、ありのままを受け入れなければいけない。

もし、家族や周囲にアルコール依存症と思われる人がいたらこのことに留意しながら本人に自覚を持たせることが必要だ。

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